当犬舎におけるワクチンに関する考察を以下に紹介いたします。

 

 
 

※代表的な混合ワクチンの種類
まず、代表的な混合ワクチンを以下に示します。

・単種ワクチン:バルボウィルス/伝染性肝炎・アデノウィルス2型/レプトスピラ 等いずれか単一のワクチン。他にも狂犬病ワクチンもあります。

・2種混合ワクチン:パルボウィルス、ジステンパーウィルス

・5種混合ワクチン:上記2種 + 伝染性肝炎(アデノウィルス1型)・アデノウィルス2型、パラインフルエンザ

・6種混合ワクチン:上記5種 + 犬コロナウィルス

・7種混合ワクチン以上:上記6種 + レプトスピラ(対応している血清型の数により混合ワクチンの数値が増える。現在、10種混合ワクチンまである が、以前は11種もあった。現在、諸事情により生産中止) 

 正直、一般の飼い主様は、どの混合ワクチンを接種すればよいのか分からないことが多いと思います。また、3〜4週間間隔で複数回接種するのが基本なので、どれをどのように接種すればよいのか難しい判断になります。

※当犬舎におけるワクチンの考察とワクチンプログラム〜ワクチンは副作用が怖いのです
当犬舎は、お引き渡し前のワクチン接種×2回以上を基本としています。
ワクチンは数多い混合ワクチンを2回接種すれば万全!!、という簡単なお話では(残念ながら)ございません。数が多いワクチンが安全な訳では ないと思っております。
まず、ワクチンは副作用(副反応)の恐れがありますので、それを考慮しないといけません。命を落とすようなもの(アナフィラキシーショック)もあれば、だるそうにしたり、下痢くらいで終わる軽度の副作用もあります。 当犬舎は、獣医師さんによりワクチンを年間500本以上接種しており、それを何年も続けております。一回接種あたりの副作用の発生確率が低くても、一般の飼い主さんよりも はるかに経験しやすい状況なので、ワクチンの副作用に対しては非常に気を使います。
言うまでもなく絶対に予防したいのは、命を落とすような副作用、すなわちアナフィラキシーショックです

ワクチンの副反応で一番怖いアナフィラキシーショック。これは、ワクチンに含まれている他動物由来の異種たんぱく質に反応してしまうことです。製薬会社の違いやロットでも発生確率に差があるようです。6種未満のワクチンでも0%ではありませんが、かなり低確率のようです。当犬舎がお世話になっている動物病院は、アナフィラキシーショックがでにくいブランドを選んでおり、幸いなことに当犬舎においてアナフィラキシーショックは未経験です。非常に稀なケースでしょうが、お客様の 愛犬で5種混合ワクチンを接種してアナフィラキシーショックがでたことが1回だけ報告を受けたことがあります(このケースは幸い助かりました)。 そのときは、接種した獣医師さんも5種で出たのは初めてで驚かれたそうです。

通常、ワクチン接種してから約2週間後にワクチンの効果(抗体価がある程度にあがる)が得られると言われておます。要するにワクチンを接種しても効果が得られるまで約半月のタイムラグあります

ワクチン接種で難しいところは他にもあります。母犬から母乳で引き継いだ抗体が体にある程度残っているときはワクチンを接種しても効果がないというのも問題なのです。母犬由来の抗体が下がるのは早くて生後4週、遅ければ12週あたりも残っているケースがあると言われております。いつ抗体が下がるかは目視で確認することはできません(抗体価を計る検査はあ ります)ので、なるべく抗体が下がっていない期間がないようにワクチンプログラムを組む必要があります。当然、母犬の母乳(特に出産直後の3日間の初乳というわれる母乳)を満足に得られなかった子犬は、生まれてからすぐにまるで無防備の状態になります。出産直後において母乳をなんらかの原因で飲めない子犬は特別なワクチン接種プログラムを別途組む必要があります。

一般的に初回のワクチン接種では、母犬の由来の抗体が少なく効果が得られる時期に接種しても抗体価はまだ十分にあがらず、3〜4週間後に追加接種して抗体価が満足できる値まで上がるといわれております(ブースター効果)。

上記より、母犬由来の抗体が下がった時期(時期は個体差あり)に間隔をあけて2回接種しないといけないということです。

ワクチンプログラムで最もシンプルで普及したものは、生後8週と12週に5種以上のワクチンを2度接種するというやり方です。このプログラムでは、ワクチンの接種の回数が少なくてすむというのがメリットですが、 母乳由来の抗体価が下がって無防備になる時期がまるで考慮されておりません。一般のショップ等で生後二ヶ月未満での譲渡後、すぐにパルボを発症して命を落とす子犬が未だ珍しいことではないようです。これらのケースでは、仮に生後4週以降に1度でもいいので2種混合ワクチンを接種したら予防できた可能性があると思います。 また3ヶ月でワクチン接種をとめると、それ以降に抗体価が下がったために感染症に感染する可能性も否定できません。
また、危険な感染症の一つであるジステンパーは、複数回ワクチン接種してもなかなか抗体価が上がらないと言われており、それを解決するためには3回以上接種したほうがよいと思います。すべてのケースで2回のワクチン接種で抗体価が満足にあがるかどうか疑問を感じます。

当犬舎において、上記の状況を鑑み、有効だと思われる以下のワクチンプログラムを組んでおります。

    生後 6週:1回目のワクチン→生後8週:2回目のワクチン→生後12週:3回目のワクチン→生後16週:4回目のワクチン
      ※2回目までは、5種以内のワクチン接種です。生後三ヶ月目以降のワクチンは、6種未満です。

成犬になったら、 生後16週のワクチン接種から1年後の追加ワクチンの接種は推奨します。以降は、獣医師さんと相談して適度な間隔で接種してください。