当犬舎におけるワクチンに関する考察を以下に紹介いたします。

 

 
 

※代表的な混合ワクチンの種類
まず、代表的な混合ワクチンを以下に示します。

・1種ワクチン:バルボウィルス/伝染性肝炎・アデノウィルス2型/レプトスピラ 等いずれか単一のワクチン。他にも狂犬病ワクチンもあります。

・2種混合ワクチン:パルボウィルス、ジステンパーウィルス

・5種混合ワクチン:上記2種 + 伝染性肝炎(アデノウィルス1型)・アデノウィルス2型、パラインフルエンザ

・6種混合ワクチン:上記5種 + 犬コロナウィルス

・7種混合ワクチン以上:上記6種 + レプトスピラ(対応している血清型の数により混合ワクチンの数値が増える。現在、10種混合ワクチンまである が、以前は11種もあった。現在、諸事情により生産中止) 

 正直、どの混合ワクチンを接種すればよいのか分からないことが多いと思います。また、3〜4週間間隔で複数回接種するのが基本なので、どれをどのように接種すればよいのか難しい判断になります。

※当犬舎におけるワクチンの考察とワクチンプログラム〜ワクチンは副作用が怖いのです
当犬舎は、お引き渡し前のワクチン接種×2回以上を基本としています。
ワクチンは数多い混合ワクチンを2回接種すれば万全!!、という簡単なお話では(残念ながら)ございません。数が多いワクチンが安全な訳ではありません。
まず、ワクチンは副作用(副反応)の恐れがありますので、それを考慮しないといけません。命を落とすようなもの(アナフィラキシーショック)もあれば、だるそうにしたり、下痢くらいで終わる軽度の副作用もあります。 当犬舎は、獣医師さんによりワクチンを年間500本以上接種しており、それを何年も続けております。一回接種あたりの副作用の発生確率が低くても、一般の飼い主さんよりも はるかに経験しやすい状況なので、ワクチンの副作用に対しては非常に気を使います。
言うまでもなく絶対に予防したいのは、命を落とすような副作用、すなわちアナフィラキシーショックです

ワクチンの副反応で一番怖いアナフィラキシーショック。これは、ワクチンに含まれている他動物由来の異種たんぱく質に反応してしまうことです。製薬会社の違いやロットでも発生確率に差があるようです。6種未満のワクチンでも0%ではありませんが、かなり低確率のようです。当犬舎がお世話になっている動物病院は、アナフィラキシーショックがでにくいブランドを選んでおり、幸いなことに当犬舎においてアナフィラキシーショックは未経験です。非常に稀なケースでしょうが、お客様の 愛犬で5種混合ワクチンを接種してアナフィラキシーショックがでたことが1回だけ報告を受けたことがあります(このケースは幸い助かりました)。 そのときは、接種した獣医師さんも5種で出たのは初めてで驚かれたそうです。

通常、ワクチン接種してから約2週間後にワクチンの効果(抗体価がある程度にあがる)が得られると言われておます。要するにワクチンを接種しても効果が得られるまで約半月のタイムラグあります

ワクチン接種で難しいところは他にもあります。母犬から母乳で引き継いだ抗体が体にある程度残っているときはワクチンを接種しても効果がないというのも問題なのです。母犬由来の抗体が下がるのは早くて生後4週、遅ければ12週あたりも残っているケースがあると言われております。いつ抗体が下がるかは目視で確認することはできません(抗体価を計る検査はあ ります)ので、なるべく抗体が下がっていない期間がないようにワクチンプログラムを組む必要があります。当然、母犬の母乳(特に出産直後の3日間の初乳というわれる母乳)を満足に得られなかった子犬は、生まれてからすぐにまるで無防備の状態になります。出産直後において母乳をなんらかの原因で飲めない子犬は特別なワクチン接種プログラムを別途組む必要があります。

一般的に初回のワクチン接種では、母犬の由来の抗体が少なく効果が得られる時期に接種しても抗体価はまだ十分にあがらず、3〜4週間後に追加接種して抗体価が満足できる値まで上がるといわれております(ブースター効果)。

上記より、母犬由来の抗体が下がった時期(時期は個体差あり)に間隔をあけて2回接種しないといけないということです。

ワクチンプログラムで最もシンプルで普及したものは、生後8週と12週に5種以上のワクチンを2度接種するというやり方です。このプログラムでは、ワクチンの接種の回数が少なくてすむというのがメリットですが、 母乳由来の抗体価が下がって無防備になる時期がまるで考慮されておりません。一般のショップ等で生後二ヶ月前後での譲渡後、すぐにパルボを発症して命を落とす子犬が未だ珍しいことではないようです。これらのケースでは、仮に生後4週以降に1度でもいいので2種混合ワクチンを接種したら予防できた可能性があると思います。 また3ヶ月でワクチン接種をとめると、それ以降に抗体価が下がったために感染症に感染する可能性も否定できません。
また、危険な感染症の一つであるジステンパーは、複数回ワクチン接種してもなかなか抗体価が上がらないと言われており、それを解決するためには3回以上接種したほうがよいと思います。すべてのケースで2回のワクチン接種で抗体価が満足にあがるかどうか疑問を感じます。

当犬舎において、上記の状況を鑑み、有効だと思われる以下のワクチンプログラムを組んでおりますが、現在主にパターン1を採用しております。

    パターン1:生後 4〜6週:2種のワクチン→生後8週:2種のワクチン→生後12週:5/6種のワクチン→生後16週:5/6種のワクチン
    パターン2:生後4〜6週 :2種のワクチン→生後8週:5/6種のワクチン→生後12週:5/6種のワクチン→生後16週:2種のワクチン

パターン1では、1回目のワクチンはその時点において母犬から貰った免疫(抗体価)が高いと無効ですが、仮に免疫が低い場合は非常に重要なワクチン接種になります。また早い時期にワクチン接種を受けると、そのときに獣医師の目視の検査により先天性の疾患の有無のチェックを受けれます。お客様に子犬の見せる前にワクチン接種と獣医師の視点での健康所見が得られますので、問題がある子犬をご紹介するリスクが低下します。その後、生後8週も2種を接種することで、犬にとって一番怖い感染症(パルボとジステンパー)を予防できる可能性がかなり高くなります。また、生後8週というまだ体力に余裕がない場合でも、下痢や体調不良などの軽度な副作用がでにくいというメリットもあります。体力が付いてくる12週以降に5種か6種程度のワクチンを接種しても、ワクチンの副作用がでにくいと思います。このプログラムの短所ですが、ケンネルコフに対応するワクチンは、生後12週に接種することになり(予防効果が得られるのは14週以降)、それまではワクチンで予防できるケンネルコフを引き起こす原因ウィルスに感染・発症する可能性があるということです。ただ、ケンネルコフの原因となるウィルス はそれだけでなく、他にも細菌由来のものがあり、ワクチンで予防できるのはウィルス性のものの二つだけです (一部のワクチンは、細菌性のものの一つに対応している特殊なものがありますが、現場の評価はまだよく分かりません)。なので、5種のワクチンを接種してもケンネルコフにならないというわけではないということを理解する必要があります

パターン2でも、1回目のワクチンは母犬から貰った免疫が高いと無効ですが、仮に免疫が低い場合は非常に重要なワクチン接種になります。生後8週で5種か6種を接種すること、伝染性肝炎、ケンネルコフ(ただしある程度しか予防できない)、コロナウィルス性腸炎を早期に予防できる可能性があるということです。このパターンの短所ですが、生後二ヶ月目に5種程度のワクチンを接種するということは主に軽度の副作用が懸念されます。当犬舎は、ワクチンを年間500本 以上接種しているので、それだけの母数だとたとえ副作用が低確率でも副作用が発生する可能性が高くなり、怖さは体感済みです。また、お客様に譲渡後と思われる生後4ヶ月目の2種ワクチン接種が難しいという難題もあります。理由は省きますが、2種ワクチンを用意している動物病院はあまりないのが 現実です。お客様の手に渡った後は、2種ワクチンを接種するのは難しく、ワクチン接種を省略するか、5種程度のワクチンを接種するかになります。5種を三回接種するのは、アナフィラキシーショックを招きやすく少々リスク が高めになる行為になりますので、その点は気がかりです。特に3回目のワクチン接種時に起こりやすくなると思われます。3回目というと、ほとんどの子犬がお客様宅に渡った後のお話になるのですが、そこでアナフィラキシーショックを起こすと、大変申し訳ないお話になってしまいます。それを回避するには、生後四ヶ月目のワクチン接種をするかしないかのお話になるので話が難しくなります。

よって、パターン1と2では、それぞれ一長一短があると理解していますが、パターン2ではお客様での2種のワクチン接種が難しいことと セ生後二ヶ月目で5種ワクチン接種による(程度は軽いのが大半ですが)副作用の懸念で、パターン1を好んで実施しております。
  これらのパターンだと、 4回ワクチンを接種することになりますが、2種を2回接種することで、ワクチンの重篤な副作用が出にくくなりますし、 パルボ・ジステンパー予防としてのワクチンが効いてない期間が少なく、国内で暮らす家庭犬としてはほぼ十分だと思います。

成犬になったら、 生後16週のワクチン接種から1年後の追加ワクチンの接種は推奨します。以降は、獣医師さんと相談して適度な間隔で接種してください。

 

※6種以上のワクチンは?
6種混合ワクチンは、5種のワクチンにコロナウィルスが入ったものです。コロナウィルスは、ありふれたウィルスで子犬にかかりやすく、激しい下痢が長期間続くため、以前は6種混合ワクチンを接種していました。その後、一部の臨床豊かな獣医師さん によると、コロナウィルスの予防の有効性が高くないとの見解をいただいており、効果に疑問を持ち始めております。 また、ここ数年において6種のワクチンは生産中止になってしまい、接種したくても接種できない状態が続いておりました。最近某メーカで 新たなる製品の生産が再開されましたので、市場には少しずつ出回ると思います。 アナフィラキシーショックが出にくいよう異種タンパク質の含有量を半減しており、重篤な副作用は稀だと思います。準推奨いたします。

※7種以上のワクチンは?
 7種上のワクチン接種はレプトスピラという細菌による疾患に対応しています 。レプトスピラは、犬も人も感染(ズーノーシス)して、時に重篤な症状を引き起こして生命を脅かす怖い病気でもあります。東南アジアなどでは大流行しており、毎年多数の死者がでているようです。
 これだけの情報だとレプトスピラが入ったワクチンは絶対接種したほうがよいと思いますが、単純に結論を出すのは早計だと思います。

 当犬舎では、安全性と流行具合、予防効果を加味してお勧めできません(特にワクチンによる副作用を懸念しております。 有名なのは子犬の生命を脅かすアナフィラキシー ショックですが、他にも副作用は多数あります)。犬はもちろん、人間の生命を脅かす危険な細菌からもたらすレプトスピラ症については、少々知識を持っていても損はないと思います。以下は、レプトスピラについての考察です。

 

★レプトスピラ症についての考察

■レプトスピラ症とは
 レプトスピラは、 細菌性の病原菌でねずみが主な保菌者で土壌にもよく見られます。病原性のものと非病原性のものに分けれます、海外では、エキゾチックアニマルでも感染しているケースが見られ、日本への輸入の検疫やその後に検出されるケースもあります。日本においての自然宿主は、野生のねずみです。その後、 主に尿を通じて各哺乳類に感染します。 ねずみを食したりすると、感染・発症するケースもあります。また、ねずみの糞尿に高度に汚染された河川・土壌に入ったり、その土壌や汚水を口に入れると感染のリスクが高まります。台風などによる洪水なども流行のきっかけを作ります。
 人のレプトスピラ症は、重症型の黄疸出血性レプトスピラ病(ワイル病)と、軽症型の秋季レプトスピラ病に分けられます。

もし人に感染が確認されたら医師は保健所に届け出る必要がある重大な疾患です。犬も感染が確認されると、家畜伝染病予防法の届出対象疾患となります。それを調べれば人間・犬も流行具合が把握できます。

また、レプトスピラは多くの病原性の血清型があります。一般的に250以上とも言われており、ワクチンで対応しているのは臨床で診られやすいと言われるほんの数種類です。

参考:レプトスピラ症とは〜国立感染症研究所

 

■レプトスピラ流行地域

海外(中南米、東南アジアなど、熱帯、亜熱帯の国々)にて多発しております。日本において関西 西南部方面の一部地域 (沖縄を中心に、九州の南部)の地域 によく発生しますが、全国的には各地に散発的に発生しています。8月〜12月の間に発生が集中しているようです。都道府県別に集計すると東京の感染数は高めであることが確認できますが、他の県と比較すると人口数が異なります。単純に数が多い都道府県が危険と誤解してはいけません。地方の人口が少ない地域で感染数が多いところが日本における流行地域と言えます。

 沖縄県におけるレプトスピラ症患者の発生状況

 

■レプトスピラのワクチン

犬のワクチンが一般的ですが、実は人用のワクチンも実用化されてていたようです。レプトスピラは上記のように様々な血清型があります。血清型が異なると、レプトスピラのワクチンを接種しても予防効果がない・効果があまり得られないといわれております。

 ・人のレプトスピラワクチン
 人のレプトスピラのワクチン:ワイル病秋やみ混合ワクチンがありました(1982年に発売開始、現在は国家検定を再度申請中であり市場の流通なし/もしかすると現在は再販されているかもしれません)。同ワクチンは、、コペンハーゲニー(copenhageni), オーストラーリス(australis)、オータムナーリス(autumnalis) 、ヘブドマディス(hebdomadis),の4血清型の全菌体ワクチンです。主に感染リスクが高い方達が接種の対象となっていたようです。

 

・犬のレプトスピラワクチン
 犬のレプトスピラの主なワクチンはかなりメジャーでほとんどの動物病院にて扱いがあります。以下、代表的なものを紹介します。 

※混合ワクチン

7種(コロナウィルスがない):イクテロヘモラジー(Icterohaemorrhagiae)、カニコーラ(Canicola)、 製品名:ノビバックDHPPi+L、ユーリカン7

8種::イクテロヘモラジー(Icterohaemorrhagiae)、カニコーラ(Canicola)、製品名:デュラミューンMX8、バンガード®プラス5/CV-L

9種:イクテロヘモラジー(Icterohaemorrhagiae)、カニコーラ(Canicola)、、ヘブドマディス(Hebdomadis) 製品名:キャニバック9

10種:イクテロヘモラジー(Icterohaemorrhagiae)、カニコーラ(Canicola)、、グリッポチフォーサ(Grippotyphosa)、ポモナ(Pomona) 製品名:バンガードプラス5/CV-L4

※レプトスピラ単体ワクチン

2種:血清型:イクテロヘモラジー(Icterohaemorrhagiae)、カニコーラ(Canicola) 製品名:ノビバックLEPTO

4種:血清型:イクテロヘモラジー(Icterohaemorrhagiae)、カニコーラ(Canicola)、グリッポチフォーサ(Grippotyphosa)、ポモナ(Pomona) 製品名:バンガード L4

 

人と犬のワクチンの血清型は、なかり異なっているのが分かりますね。

共通しているのは、ヘブドマディス(Hebdomadis)だけというのは大変興味深いです。

 

■レプトスピラの血清型の流行

 国内で犬から感染が確認できた血清型は以下だそうですが、他にもあるという情報もあります。(順不同)

  1.カニコーラ(Canicola)

  2.イクテロヘモラジー(Icterohaemorrhagiae)

  3.コペンハーゲニー(Copenhageni)

  4.ヘブドマディス(Hebdomadis)

  5.オータムナーリス(autumnalis)

  6.オーストラーリス(australis),

  7.ヘブドマディス(Hebdomadis)

  8.オータムナーリス(autumnalis)

 

犬のレプトスピラ感染〜国立感染症研究所によると、国内の犬におけるレプトスピラ症の血清型は、従来カニコーラ(Canicola)あるいはクテロヘモラジー(Icterohaemorrhagiae)による感染によるものとされていたが、実態調査のために2007年8月〜2011年3月にかけて10県(茨城, 千葉, 三重, 宮崎, 佐賀, 福岡, 熊本, 鹿児島, 長崎, 沖縄)においてレプトスピラ症と診断された犬の抗体検出および分離レプトスピラの解析から、主要な血清群はヘブドマディス(Hebdomadis)、オータムナーリス(autumnalis)、オーストラーリス(australis),であることが分かった
との記述があります。この検査は現在よりも数年前の記事であり、全国すべての県を調査したわけではないのですが、もしこれが日本における現在の流行の血清型なら、上記の犬のワクチンは9種混合ワクチンのヘブドマディス(Hebdomadis)以外、何れも引っかからないケースが多数であるという恐ろしい話になります。これらは人用のレプトスピラワクチンに対応している4つの血清型の内の3つの血清型です。これらの記述ではペットにも多く感染が見られたとありますが、そのペットが室内犬なのか、外飼いなのか、あるいは特殊な環境だったのかまでの記載はありません。

 

 通常、ワクチン接種により得られる各疾患の抗体は1年以上、長ければ7年以上持つといわれておりますが、レプトスピラは半年〜1年と言われております。

 レプトスピラを可能な限り全力で予防するのであれば、9/10種かレプトスピラ単体の4種を、半年〜1年スパンで接種する必要があるかもしれません。それでもワクチンに対応していない血清型に暴露されたのなら、予防効果は期待できません。犬に感染が認められた製品化されていないレプトスピラの血清型は多数あります。要するにワクチンでレプトスピラを完全に予防することは、現時点で不可能であるということは言えるでしょう

 

■レプトスピラにかかり易い環境

日本においては沖縄を中心に、主に九州の南部やほか西日本に多く発生しています。東日本はまったく発生していないという訳ではなく、全国的に散発的に発生しているようです。感染しやすい実例は、下水道業者さんや 、流行地域において河川と関係があるレジャーインストラクター等の方に見られるそうです。  私が知っているベテランの研究肌の獣医師さん(各地から重症患者が集まる動物病院)によると、過去何度かレプトスピラを発症した犬を診察したそうですが、 いずれも外飼いで 野生のねずみを捕食してもおかしくない自由奔放に生きているような特殊な条件を満たす犬に留まっていたようです。 学者肌の先生なので、更にレプトスピラの血清型を調べたら、当時のワクチン(9種)では対応していない血清型だったそうです。なのでこれらの犬は、8種や9種のワクチンを仮に接種しても、おそらく予防できないということでした。

以下のリンクは感染例の論文ですが、東京で重症のレプトスピラの患者さんがでると論文まで書けるということです。また感染者は、ねずみと濃厚接触があったことが記述されております。

東京 23 区内で感染した重症レプトスピラ症(ワイル病)の 1 症例

この症例においては、二つの血清型のどちらかが指摘されています。(イクテロヘモラジー(Icterohaemorrhagiae)かコペンハーゲニー(Copenhageni))

他にはどのような場所が危険なのでしょうか。
例えばどぶ川に入ったとか、異臭を発する澱んだ沼地に入ったなら感染してもおかしくは無い気がしますね。

もしそのような環境にいる愛犬ならレプトスピラのワクチンは選択肢の一つになると思います。 ただし、どのワクチンを接種するかという問題もありますし、運よくワクチンに含まれている血清型なら予防は可能というとこです。

 

■レプトスピラにかかり難い環境

 まずレプトスピラは野ねずみの腎臓におり、尿で排出されて土壌などを汚染します。湿った土壌に長期間生存できると言われております。
野外には少なからずねずみもおります。当然排泄します。また、そのような土壌においてお子様が平気で遊んでいます。犬も歩いております。日本において、ねずみはおそらくどこにでもいる野生の生物の一種類でしょう。病原菌をもったねずみは身近にいるといっても過言ではないと思います。マンションやよくメンテナンスしている戸建てにおいてはねずみはほぼいないので心配する必要がないと言えますが、野外においてねずみがいない環境のほうが少ないかもしれません。緑豊かな野山はもちろん、古い民家や飲食店の近くはねずみがいそうですね。

 当犬舎の近くには荒川の堤防があり、盛り土に芝生で、犬の散歩道になっていたり、そこで近所の児童が泥にまみれて遊んでいます。でもレプトスピラの感染・発症は聞いた事がありません。サッカー場や野球場もあり、子供達が汗と泥にまみれながらいい汗をかいております。ウチの息子も荒川の堤防で遊んでいます。たまに体調を崩して医師の診察を受けますが、レプトスピラを疑われた症例はありません。
通常の暮らしや環境では、人も犬も感染のリスクはゼロではないのですが、非常に低いのではないでしょうか。要するに感染力は低いのではないかということです。

もしも感染力が高いのであれば、身近に感染事例が多発して、特に外で遊ぶお子様には脅威となります。そうなっていたなら上記の人用のワクチン製造が再開され、お子さんのワクチン接種の対象とあるでしょう。

一般の家庭犬や 外で遊ぶお子様にも稀な疾患であることを鑑みると、関西方面の一部地域を除けばレプトスピラの心配はあまりする必要がないと思っております。

 

■築地市場は危ない場所なのか? H30.10.30

 ここで最近のニュースを見て、思ったことがあります。それは築地市場に棲んでいる多数のねずみをどうするかという内容でした。それで思ったのですが、築地には食品を扱う環境上、人がいない時間や天井の人のいない場所にねずみが多数生息して、特に魚を多く扱う市場という関係で水を多く使い、湿気も多い。レプトスピラのハイリスクゾーンではないのだろうかと。
 そこでネットで「築地、レプトスピラ」で検索しました。そうすると、レプトスピラ拡大の懸念記事が多くヒットしました。また築地市場のトイレには、レプトスピラの注意を促す張り紙があったということです。長年に渡って築地にいる無数のねずみはアスベストが吹き付けられた鉄骨を闊歩して、あちこちに排便していたのです。このようなハイリスクなところでも、多くの作業員が長年働き、関東の人は築地由来の食品を食べていたのです。そのような状態でも都知事が豊洲移転を延期しました。正直、知れば知るほど築地には怖さを感じてしまいます。でも築地由来の食材でレストスピラを発症したという話は聞いたことがありません。市場で働く人に発症したというニュースも聞いたことがありません。もしそのようなケースが出たら大ニュース、大事件になるでしょう。当然、人口が密集している東京周辺は、人口が少ない沖縄県よりも桁違いに感染者が多くでるはずですが、現実は異なります。
 この件について感じたことは、身近にねずみがいても感染例がないか極端に少ない。これは市場の食材への衛生管理がしっかりしていたことが想定されます。もう一つ言えるのは、レプトスピラの感染力は思ったより高くないということの証左ではないかということです。

 

■野ねずみ以外の感染動物は?

 レプトスピラ症は哺乳類に感染しますので、感染したら主に尿で細菌をしばらく撒き散らす固体となります。それが前提ですが、基本的には野めずみが原因動物です。

他の哺乳類はどうでしょうか。

 ハムスター:過去、レプトスピラに感染していたケースもあったようですが、レアケースと判断してもよいでしょう。

 輸入エキゾチックアニマル:検疫やその後に感染が認められたケースが散発しているようです。哺乳類には気をつけたほうがよいでしょう。

 

■犬のレプトスピラの発生状況

農林水産省のHPでの犬のレプトスピラ発生状況は、ここ数年20〜40件/年のようです。これは全国での集計の値です。ただし、血清型には集計されないものもあり、実際はこれよりも増えると思われます。直近のH29年の実績では、関東で東京都と神奈川県は0県、千葉県、埼玉県はともに2件です。H28年は、神奈川県は0件、東京都、千葉県、埼玉県は1件です。H27年は、東京都、神奈川県で0件、千葉県で1件、埼玉県で2件という具合です。都市部に少なく、郊外で出やすいということは、(推測ですが)室内飼いと外飼いの犬の比率と関係している可能性があります。現在、東京23区内で外飼いの犬は非常に少なく、ほぼ見かけません。犬舎がある葛飾区周辺は戸建て住宅が非常に多いのですが、外飼いのおうちを探すのは困難で、私も近所で外飼いのお宅に心当たりがございません。本来柴犬は外飼いの犬なのですが、柴犬を外で飼っていると虐待と主張する人もいるくらい、ある意味特殊な地域です。東京はとても人口が多く、面積のわりに人口密度も非常に高い世界でも稀な超人口過密都市です。今世紀に入ってからマンションでも愛犬を飼える物件が当たり前になってきたことで、愛犬の数も比例して確実に増えております。それを加味すると、郊外よりもリスクが低いといえるのではないでしょうか。

監視伝染病の発生状況:農林水産省

 

■まとめ〜レプトスピラの予防について

 ワクチンでは対応していない血清型も多く、ワクチンを接種すれば安全という単純な訳ではありません。血清型と一致して、かつ高い抗体価を持っている時に初めて予防できるのです。ただ、レプトスピラの流行型は変化してきているようで、現時点で開発されたワクチンで完璧に対応するのは困難です。流行地域ならその地域・その時点で流行しているワクチンを接種すると予防効果は期待できます。非流行地域で、不衛生な水辺や土壌に行かない野ねずみと接点がなさそうな愛犬は、接種しなくてもよいかもしれません。愛犬が室内飼いならなおさらです。
それよりも、
 ・お散歩帰りは足を濡れ雑巾などで足の裏をしっかり拭いて、次亜塩素酸などでしっかり除菌する。
 ・沼地や野ねずみが多く生息しているようなハイリスクゾーンに立ち寄らない。
 ・輸入物のエキゾチックアニマルをむやみに飼わない。
 ・流行地域出身の愛犬なら、獣医師に相談。
 ・人も普段から手洗いを心がける。

を実践するのが一番のレプトスピラ症の予防ではないのでしょうか。リスクをゼロにはできませんが、確実に下げることができます。レプトスピラは怖い疾患を引き起こし、土壌に長く感染力を持って生き続けられます。ねずみという意外に身近な小動物が保菌動物という性質上、くらしに身近な病原菌といえますが、条件が揃わないとなかなか感染しないようです。幸い感染力は強い訳ではないようですし、消毒にも弱く、その気になれば簡単に除菌できます。

 愛犬の健康を考えレプトスピラのワクチンが未接種だと心配で仕方ないと思う方でしたら、リスクや効果を承知の上で獣医師さんと相談して接種することをお勧めいたします。飼い主さんが毎日不安に過ごしていると、愛犬も飼い主さんの不安を感じ取ってしまい、正直お互いに良くありません。

レピトスピラに対応したワクチンは上記のワクチンが代表的ですが、製品によって血清型が異なります。またレプトスピラが入ったワクチンは高値の接種料が発生します。また、非流行地域において、上記の製品を全部扱っている動物病院はまずないと思います。獣医師さんの判断で、扱っている製品は限られております。もちろん私もすべての動物病院を知っているわけではないのですが、通常は一つ、多くて二つくらいのところが多いでしょう。

 ここでお願いがあるのですが、
 なじみの動物病院において、扱いがない特定のワクチンの接種を希望し、取り寄せて欲しいという依頼はどうかお止めください。どうしてもその製品を接種したいのでしたら、それを扱っている動物病院さんを電話問い合わせ等で探して接種するのが一番よい方法です。
 ワクチンというのは、1本毎に入荷できるわけではなく、通常10バイアル/箱単位で取り寄せます。自分の愛犬に2回接種しても8バイアルは残ってしまいます。需要が見込めなくて使用期限があるワクチンの在庫を、スペースに限りのある冷蔵庫に保存するのは動物病院さんに大きな負担がかかるので、、かなり無理な依頼だということを覚えておいてくださいませ。

ちなみに当犬舎の繁殖犬は、レプトスピラのワクチンは接種の対象外としております。子犬も同様ですが、例外として海外 や関西方面の西南部に子犬や成犬をお譲りする際は、必要に応じてレプトスピラのワクチンを接種した実績がございます。 接種した数は少ないです。おそらく総数は多くても10本ほどでしょうか。だいぶ前になりますが、そのうちの1回の接種に起きたことは、流行地域へ輸出するために生後半年の体力がある若い犬でコンディションのよい状態でレプトスピラが入った混合ワクチンを接種しました。接種後数時間で体調不良が出てしまい (アナフィラキシーショックではありません) 、以降長期に渡って苦しんだことがあります。 今まで、1種〜6種のワクチンで5千本位は接種しましたがそのような経験したことがありません。レプトスピラが入った混合ワクチンでは、わずか10本程度で出てしまったのです。これはたまたまのレアケースでしょうか。当犬舎ではなるべくレプトスピラが入った混合ワクチンは接種しないので、サンプル数が少なく客観的な判断が出来かねるのですが、これが当犬舎において経験した 比較的重い副作用の一例です。
 また、当犬舎にお見えになったお客様のお話を聞くと、以前愛犬を飼っていた際にレプロスピラが入ったワクチンを接種してアナフィラキシーショックが出た苦い経験をお話されたり、譲渡後、ワクチンを接種して体調を崩したお悩みの問い合わせがちょくちょくあったりします。正直、あまり評判が良くないな、という印象はあります。

 ただ、レプトスピラのワクチンを全面否定するのではありません。お住まいの地域事情や愛犬のすごし方によってお勧め度は大きく異なるものだとご理解していただければ幸いです

 この文章は、なるべく公的なサイトの情報を中心に記載しておりますが、当犬舎の主観も入っております。お客様においては自己責任において、レピトスピラのワクチン接種の有無をご判断してください。接種してもしなくても愛犬への健康リスクはゼロではございません。